「ふむ。そろそろか」

 いつの間に来ていたのか、人の姿をしたヴィアベルがのそりとペリウィンクルの頭に顎を乗せてくる。

「うっ、重い……」

 背伸びをして跳ね除けると、ヴィアベルは上機嫌でクスクスと笑い声を漏らした。

「相変わらず小さいな。頭を置くのにちょうど良い高さだが、キスをするには少々面倒だ」

「おやすみのキスはもう卒業しました」

「ああ、そうだな」

 二人の会話を遮るように、ガゼボへ通じる道の向こうから、二人分の足音が聞こえてくる。
 ペリウィンクルは慌てて身だしなみを整えると、今夜の招待客を出迎えるためにガゼボの前へ立った。

 一人目は、セリ。二人目はシナモンだ。どちらも気まずそうな顔をしてガゼボの前で立ち竦む。
 そんな二人へ、ペリウィンクルはいかにもできるメイドといった風情でニッコリと微笑みかけた。

「ようこそ、月見の茶会へ。どうぞ、おかけくださいませ」