「セリ様はまだ、失恋の傷が癒えていないのよ? 自分から捨てておいて、どうして近づいてくるのかしら。本当に、男の人ってデリカシーがないわ」

 どうやら彼女は彼女なりに、初めての友人を大切にしているらしい。
 もしかしたら、同じ悪役令嬢であるセリに、未来の自分を重ねているのかもしれない。

 容赦なくシッシッとジェスチャーするローズマリーに、シナモンは肩を落として去っていく。
 そんな光景を、何度見たことか。

 ローズマリーの気持ちは、わからなくもない。
 だが、こちらを見るシナモンの目に、少しずつ鬱憤がたまっていくのを感じていたペリウィンクルは、どうにかしなければと焦っていた。
 
 このままでは、ローズマリーかセリ、どちらかに害が及ぶのではないか。
 剣呑さを増して鋭くなっていく視線に、危機感を覚えた。

 ヴィアベルから月見の茶会を提案されたのは、そんな時だったのだ。
 ローズマリーのダイエットに手を貸してくれた時のように、何とかしてくれるのではないか。そんな淡い期待を抱いて、ペリウィンクルは今日の茶会を準備している。