真っ黒な夜空に、笑う猫の目のような三日月が浮かぶ。
 今夜の星々は三日月に遠慮でもしているのか、瞬きが少ない。そのせいでやけに三日月がポツンと孤立して見えて、幻想的とも不気味とも取れる不思議な空になっていた。
 
 ヴィアベルに言われるがままに茶会の用意をしてみたが、果たしてどうなるのか。
 暗いガゼボの中を照らすために置いたキャンドルへ火を灯しながら、ペリウィンクルは夜空を見上げた。

「月見のお茶会を開くくらいで、どうにかなるとは思えないのだけれど」

 最後の一つに点火すると、辺りはほんのり明るくなっていた。
 ポツポツと小さな明かりが照らすガゼボは、異世界に迷い込んだような非現実味がある。

「こういうロマンチックな場所でお茶をするのが、気分転換になる……のかなぁ?」

 どうせだったら満月の夜に茶会をしてくれたら楽だったのにと愚痴りながら、ペリウィンクルは次の準備に取り掛かった。