今世での彼女の名前は、ペリウィンクル。
 青紫色の花を咲かせる、蔓性常緑低木と同じ名前だ。
 昔から頭痛やめまい、物忘れに薬効があると考えられている植物で、春の国では『小さな魔法使いの草』と呼ばれ、秋の国では『不死の象徴』と呼ばれている。

 四季の国では、子どもに植物の名前をつけるのが一般的だ。
 あらゆる妖精は、植物を愛する。そんな彼らと契約するためのきっかけになるから、という理由らしい。

 少々長い名前ではあるけれど、ペリウィンクルという名前を彼女は気に入っている。
 仲が良い友人なんかは「ペリ」と呼んだりするけれど。

「ペリウィンクルなんて名前、ゲームにはなかったよね。つまり、私はモブか」

 なるほど、とペリウィンクルは納得したように頷いた。
 きっと前世で徳を積んだから、今世はまったりモブ生活でも送るが良いと神様は言っているに違いない。

(ありがとう、神様! よくがんばった、前世の私! そして、モブ生活バンザイ!)

 道ゆく人に怪しまれるのも構わず、ペリウィンクルは桜の木を拝んだ。と、その時である。