「見損なったよ、セリ」

 本日、とうとう犯人をセリと断定したシナモンは、幼馴染みである彼女に対し、嫌悪感をあらわに言い放った。

「まさかキミが、犯人だったなんてね!」

「え? 犯人って……何のことを言うとるん? シナモン」

 幼馴染みから発せられた声とは思えない冷たい響きに、セリは怯えた。
 それでも、絞り出したような小さな声で言い返せば、蔑むような視線で見返される。

 ヴィヴァルディの言葉に不慣れなセリは、リコリスが誰かに転ばされたとシナモンに泣きつき、彼が犯人探しをしているという噂を知らないでいた。

「しらばっくれたって無駄だよ。僕は知っているんだ。この島へ来た初日、リコリス嬢を転ばせたのはキミだ!」

 だからセリは、シナモンが何を言っているのか、ちっとも理解できなかった。
 リコリスなんて子は知らないし、誰かを転ばせたこともない。