ローズマリーたちの学校生活が始まった。
 ペリウィンクルはローズマリーが学校へ行っている間、庭師として仕事をしている。

「ローズマリーお嬢様の好みは八重咲きのミニバラだけど……ソレル様の好みに合わせるなら、大輪の白バラは欠かせないし……」

 ここでは、生徒一人一人に箱庭が与えられる。
 妖精使いならば妖精が好む環境を整えよ、ということらしい。

 春の国第一王子の婚約者として、ローズマリーの箱庭は誰に見せても恥ずかしくないものを造らなくてはならない。
 最終目的は婚約破棄ではあるけれど、今はまだ、その時ではないからだ。

「うーん……責任重大だわ」

 ペリウィンクルが唸りながらローズマリーの箱庭をいじっていると、ふと影が落ちる。
 顔を上げてみると、ヴィアベルの長身が日光を遮っているところだった。
 ぬ、と背を屈めながら、ヴィアベルはやや不機嫌そうな顔をしている。