「落としましたわよ」

 落ちた花を、華奢な手が拾い上げる。
 渡された花をエプロンで受け止めながら、ペリウィンクルはにっこりと微笑んだ。

「ご卒業おめでとうございます、ローズマリーお嬢様。婚約破棄も無事に終わって、何よりですね」

 のんきに笑っているペリウィンクルに、ローズマリーはわなわなと震えた。

「一緒に帰らないなんて……聞いていませんわよ、ペリ!」

「ははは。まぁ、言ってませんからね」

「どうして……なんて愚問でしたわね」

 ローズマリーの視線が、ペリウィンクルの背後に向けられる。
 ペリウィンクルはそこになにがあるのか重々承知していたので、あえて見ることはしなかった。
 人の姿をしたヴィアベルが、恥ずかしくなるような甘ったるい目で自分を見ているだなんて、ローズマリーを待つ間に通り過ぎて行った人たちの反応を見ればわかるというものだ。