ペリウィンクルにはわからない。
 彼女は自分勝手で、自分本位で、わがままで……良いところなんてちっとも見つからない。
 
 妖精魔法で黙らされ、縛られるリコリス。
 床へ転がされた彼女を、妖精の大群が運んでいく。
 その様は、エサを巣に持ち帰るアリのよう。

 リコリスが連行され、場に静寂が訪れる。
 誰もが、この場がどうおさまるのかと固唾を飲んで見守った。

「ローズマリー」

 おまえは見放さないよな?
 口にはしないが、その目は雄弁に語る。

 だが、ローズマリーはソレルに応えない。
 顔の感情を削ぎ落とし、口元だけは微笑みを浮かべて、彼女は優雅に礼をする。
 そうして彼女は、大講堂を後にした。

 茶番の幕が下りる。
 ペリウィンクルは、閉じていく扉の向こうで、ローズマリーが軽やかな足取りで駆け出していくのを見届けてから、ヴィアベルとともに席を立った。