声も出ないソレルの代わりに、リコリスが再び短い声をもらす。
 崩れ落ちるソレルを支えきれず、彼女はともに倒れた。
 助けを求めて周囲も見回しても、手を貸してくれるような者はいない。

 親友にしていたトゥルシーはどこへ、と視線を彷徨わせる。
 しかし、目当ての彼女も見つからない。

 そこでようやく、リコリスは気づいたようだ。会場を満たす嗤笑は、ローズマリーではなく自分たちへ向けられていたのだということに。

 恥ずかしくて、惨めで、どうしようもなく腹が立って。リコリスは、真っ赤な顔をして叫んだ。

「どうして……どうしてこんなことになったの? ねぇ、スヴェート。あなた、わたしの妖精なんだからなんとかしなさいよぉっ!」

 ヒステリックな声が大講堂に響き渡る。
 ペリウィンクルの隣で、ヴィアベルが呆れたようにため息を吐いた。

「呆れた。あの女は、自分の契約した妖精がいなくなったことにも気づいていなかったのか」