ペリウィンクルは髪を一本抜いた。
 青紫色をした髪を受け取ったヴィアベルは、それを人形の首へリボンでもつけるかのように結ぶ。

「これを食わせれば、名もなき生き物もとりあえず落ち着くだろう、とのことだ」

 こんな人形一つでどうにかなるものなのか。
 ペリウィンクルは不安に思ったが、妖精の女王が言うのならそうなのだろう。
 というか、信じるしかない。

「さぁ、スヴェート。おまえがこいつを連れ去ったことを名もなき生き物は知っている。ならば、おまえが持っていくことが最も効果的なはずだ」

「わかりました。その役目、謹んでお受けいたします」

 ヴィアベルから人形を受け取ったスヴェートは、蜂蜜色の目をより一層濃くさせて跳ねていった。
 部屋の扉が、ひとりでに開く。扉の先にあるはずの廊下はすでに破壊され、切り立った崖のようになっていた。

 スヴェートが、人形を捧げ持った──その刹那。