「四季の国へは行けなくなるが、望みは叶う。さぁ、おまえはどうする?」

 冗談めかして言われていた、対価。
 今度は冗談でなく、本気で提案されている。

 ペリウィンクルの望みは、リコリスを生贄にすることなくこの事態を収束させること。
 そんな彼女の望みに対して提示された対価は、中央の国へ留まること、そして女王の茶会で菓子を提供することだ。
 現在進行形で中央の国をめちゃくちゃにしていることを鑑みれば、この対価は破格と言える。

 ペリウィンクルの脳裏にふと、祖父と両親の墓が思い起こされた。
 だけど、それだけだ。それ以外に未練なんてない。

 ローズマリー、セリ、サントリナと会えなくなるのは少し寂しい気もするが、どのみち卒業後はおいそれと会えるような人たちではない。
 それに、妖精と契約している彼女たちは、中央の国へ来ることが可能だ。

 ペリウィンクルはそっと目を閉じて、祖父と両親を思い浮かべた。
 もういない彼らが微笑んだような気がしたのは、彼女がそうあってほしいと思ったからでしかなかったが、ペリウィンクルはそれで良いと思った。