誰かの泣いている声がする。
 ペリウィンクルはまたか、と思った。
 
(きっと、いつもの悪夢。目を覚ましても、ヴィアベルはいない。それならこのままずっと、夢の中にいようか)

 ペリウィンクルが再び意識を深く沈めようとしていると、涙まじりの声が彼女を呼んだ。

「ペリウィンクル様、ペリウィンクル様。お願いです、どうか起きてください」

 体を揺さぶられて意識が浮上したペリウィンクルは、うっすらと目を開いた。

(ああ、起きちゃった)

 残念だ。このまま悪夢に身を任せていたかったのに。
 そうしたら、ヴィアベルがいないことを悲しまなくて済む。

 ぼんやりした頭でそんなことを考えていたら、声の主が焦り出した。