「私、思うんですけど……ディル様がメンヘラ化したのって、ヒロインのせいではないでしょうか。ゲームでのトゥルシー様は、ヒロインエンドでも悪役令嬢エンドでもディル様を想っていましたよね。それなのに今回、ディル様そっちのけでヒロインに懐いていたから……ディル様、拗らせちゃったのかなぁって……」

 メンヘラは、もっと自分を見てほしいという気持ちが強い。
 今回、トゥルシーがディルを一切気にかけなかったことが、彼の眠れる一面を引き出してしまった原因なのではないか、というのがペリウィンクルの考えだ。

 あの夜、ペリウィンクルは妖精王の茶会で見てしまった。
 シナモンに連れてこられたトゥルシーがリコリスのことばかり気にかけていることに、ディルはひどく苛立っている様子だった。

 これから告白しようとしている相手が他の人ばかり気にかけているのだ。ディルが苛立つのも当然だろう。
 そう思ってペリウィンクルは傍観に徹していたのだが、ディルはいつまでたっても茶を飲もうとしない彼女に痺れを切らし、こともあろうに口うつしで飲ませた。