「来ないわけがない。大事なリコリス嬢のためなら、退学だって受け入れるつもりなのだから」

 そう言うディルは、先ほどまでの不敵な笑みがうそのような、自虐めいた表情を浮かべていた。面白くない、とその顔に書いてあるようである。
 その表情を見て、ペリウィンクルは違和感を覚えた。
 少し前はトゥルシーのことを観察対象としてしか見ていないように思えたのだが、何か変化があったらしい。
 独占欲のようなものを感じて、ペリウィンクルはにやけそうになった。

 そして、変化はもう一つ。
 彼は、トゥルシーの紺色の目によく似た、スイートピーの花束を持参していた。
 少し前に、ローズマリーから「花は愛する人へ贈るもの」と言われたばかりである。
 ということは、この花束はトゥルシーへの贈り物ということなのだろう。

(花言葉はいろいろあるけれど……私を忘れないで、という意味かしら)

 そう考えると自虐めいた顔も拗ねているように見えて、微笑ましく思えてくる。
 ペリウィンクルは、聞かずにはいられなかった。