(いや、違う。ヴィアベルが、じゃない)

 あの時、ペリウィンクルは考えていたではないか。
 ヴィアベルの唇に触れたらどんな味がするのだろう、と。

 バランスを崩そうとしていたのは、ヴィアベルではなくペリウィンクルの方だ。
 彼はペリウィンクルの体調を気遣っていただけで、その気なんてなかった。

(まさか、初恋の人に二度も恋をするとは……)

 一度目を諦めた覚えはないから、もしかしたらずっと恋をしていたのかもしれない。
 親離れ云々も女性として見てもらいたくて背伸びをしていただけかもしれないと思い至ったら、もう恥ずかしくて仕方がなくなった。

(次に会った時、どんな顔をすれば良いのよ……)

 まともに目を合わせることができるのだろうか。
 神出鬼没な彼がいつ現れるか知れず、ペリウィンクルは今日こそ来るか⁉︎ と毎日ドキドキする羽目になった。