「そうなのか?」

「身近な者に恋人ができれば、自分も、と思うのはよくあることだろう?」

 フィンスターニスの言葉は、そのほとんどが戯言である。
 だが、彼の言葉はごく稀に、ヴィアベルに転機をもたらす。ペリウィンクルを番に選んだ時も、そうだった。

「……」

「まぁ、どうするかはおまえの勝手だけれどね。さぁて、行くとしよう。じゃあね、ヴィー。番とうまくやるのだよ」

 言いたいことだけ言うと、フィンスターニスは妖精姿に戻ってパタパタと飛び去る。
 そんな彼の蝶のような翅を見送りながら、ヴィアベルは思案するようにしばし佇んでいた。