数日経って頰の腫れが引くと、契約者の孫だというその子供は、少しだけマシに見えるようになった。
 青紫色の髪は人にしては少々珍しく、角度によって色を変える目はブラックオパールのようにも見えて、眺めているだけで面白い。
 子供特有のふわふわとした頰はマシュマロのようにやわらかく、たまにつつくと涙が止まるのがオモチャみたいでおかしかった。

 けれど、毎日毎日飽きもせず「パパ……ママ……」と泣いてばかりいられるのは気が滅入る。
 数週間も経つと、頰をつついて泣き止ませるのも飽きてきた。
 その上、契約者はペリウィンクルのことで手一杯で、茶会どころかお茶の時間に菓子を出すこともない。
 だから当然、ヴィアベルは怒った。契約と違うじゃないか、と。

「おい。茶会はどうした」

「すまないな、ヴィアベル。おまえの好きなハーブとチーズのクッキーを焼くと、あの子が泣くんだよ。あれはわしが娘に教えたレシピだから……」

 ヴィアベルが好んで食べるハーブとチーズのクッキーは、ペリウィンクルの母もよく作っていたお菓子らしい。
 作ると母を思い出してペリウィンクルが泣くから作れないのだと言われた時、ヴィアベルはそろそろ潮時かもしれないと思った。