人はそれを恋や愛と呼ぶが、妖精からしてみればそんな甘っちょろいものではない。
 気まぐれで面倒くさがりなくせに、常に気になって仕方がなくなり、困っているなら助けずにはいられなくなり、目が届かないと心配で夜も眠れず、無視されたり要らないなんて言われた日には死にそうになる。

 妖精の生死が、人の態度一つで決まるのだ。そんな重いもの、恋や愛なんて言葉で収まるわけがない。

 魅了や服従といった魔法による症状なら、改善の余地もある。
 だが、魔法ではないから、たちが悪かった。

 妖精は、そんな思いにさせてくる人のことを、番と呼ぶ。
 相手と離されると身を引き裂かれるような思いをすることから、きっと元は一つだったに違いないと考えて、二人で一つ、つまり番だ、ということになったらしい。

 番は、前置きもなく唐突に決まる。
 経験者曰く、感覚的には【選ぶ】らしい。