「それはどういった作戦なのだろう? 今回こそは、私にも教えてくれるのだろうな?」

 視界の端で、妖精たちが悲鳴を上げながら逃げていくのが見える。
 一緒に逃げてしまいたいと現実逃避しながらも、ペリウィンクルはヴィアベルから目を離すことができなかった。

(……こっわ!)

 ゾクンと背筋を何かが這い上がっていったが、それに構っている余裕なんてペリウィンクルにはない。
 それよりも、底冷えするような冷気が彼から漂ってきている方が問題だった。

 今更ながらに、ヴィアベルが月明かりの妖精なのだと理解する。
 彼は、雪深い森の奥にある、湖へ降り注ぐ月明かりから生まれた妖精なのだ。
 冬の国にあるというその湖の氷がすべて溶けるのは、数えるほどしかないらしい。
 ヴィアベルは、その奇跡的な日に生まれたのだと言っていた。

 ゆらゆらと地を這う冷気は、ペリウィンクルの方へと迫ってくる。
 このままいけば箱庭の植物たちにも影響が出そうで、気が気ではない。