怒っている、とトゥルシーは思った。
 どうして怒る必要があるのだろう。
 だってディルは、トゥルシーにとってただの知り合いに過ぎない。
 放課後、図書館で過ごす間に二、三言言葉を交わす程度でしかないのだ。

「花泥棒は、退学処分になる」

 正義感から、ディルは言っているのだろうか。
 交わした言葉は少ないものの、それでも彼にそんなものがあったことに驚きを隠せない。

「あなたは、リコリス嬢のために退学するつもりなのか?」

 バレている。
 トゥルシーはディルの言葉に動揺しそうになったが、なんとか平静を装う。