(私がお針子だったら、衣装を作れたのに)

 とはいえ、本当にお針子だったら、ローズマリーの専属庭師にはなれなかっただろう。
 だから、これで良かったのだ。と、ペリウィンクルは思い直す。

「つまらないなんて言っては駄目よね。これで良かったと思わないといけないわ。だって、リコリス様が花泥棒だった場合、彼女は退学処分になってしまうもの。そうなれば、わたくしの婚約破棄の夢が泡と消えてしまう。それを回避できただけでも、上々としましょう」

 ローズマリーの言葉に、ペリウィンクルは何か引っかかるような気がした。
 だが、考え事をしていた彼女は、その違和感を深く考えることなく聞き流す。

(ニゲラ様がヒロインになびくのは、サントリナ様と違って彼女が女性らしかったから。つまり、サントリナ様の女性らしい一面を見せたら、案外コロッといくのでは?)

 そもそも、ニゲラとサントリナは仲が悪いわけではない。
 時間さえあれば剣の稽古に乗馬にと、友人らしい交流はあったのだ。
 リコリスが、しゃしゃり出てくるまでは。