(いつも淡々とした声しか出さないくせに。こんな時ばっかり、もう!)

 耳に当たった吐息のせいで不本意にも体を震わせてしまい、ペリウィンクルはいたたまれなさについ、逆切れするように睨みつけた。
 親のようにも、兄のようにも思っていた人物が、大人の色香を持ち出してきたのだ。強制的に意識させられて、恥ずかしさのあまり彼女が八つ当たりするのは、仕方のないことだろう。

「何するのよ、ヴィアベル!」

「何、とはこちらが聞きたい。先ほどのあれは何だ」

「は? あれって何」

「手を握って見つめ合っていたではないか」

 睨みつけた先に無表情の顔を認めて、ペリウィンクルは眉を寄せた。
 相変わらずの人外じみた美貌だ。整っているからこそ、無表情だと現実味がなくて恐ろしさを覚える。