『あんまり無防備な顔で眠るものですから、裏切られたという気持ちもすっかりなくなってしまって。殿方をかわいいと思う日がくるなんて、思いもしませんでした』

 そう言って笑うセリは聖母のようだったと、興奮気味に語るローズマリーは新鮮だったと思い出す。

 セリと恋人になってからのシナモンは、以前にはなかった自信に満ち溢れていた。
 以前の彼は、甘えっ子を演じることで自信のなさを覆い隠していたのだろう。セリという恋人を得て、頼り頼られる関係になり、最近は男らしさに磨きがかかっている。
 図書室で仲睦まじく勉強する二人の姿はたびたび目撃され、「やはり妖精王の茶会の噂は本当だった」と信憑性が増しているようだ。

「ペリウィンクルさん?」

 感慨深く思っていたところで声をかけられ、ペリウィンクルははたと我に返った。

「あ、ああ、ごめんなさい。ちょっと、考え事をしていました。この花なんですけど……実は、盗まれるのは今日が初めてではないんです。もう何度も盗られていて……ローズマリーお嬢様からは気にしないようにと言われているのですが、そろそろ限界ですね」

「そうでしたの。ローズマリー様はきっと、大ごとにしたくなかったのでしょうね」

「おそらくは……」