全治三ヵ月

その晩、先に寝てしまった悠を起こさないように、リビングで小さな灯りを点けて、部長からの封筒を開けた。

【御崎　智さん

突然の僕の退職、挨拶もできぬまま申し訳ありません。
この三ヵ月、僕が想像していた以上の仕事を頑張ってくれて本当にありがとう。
職場の皆も君が三ヵ月で退職すると言ったら大変残念がっていました。
特に宮川さんはとても君を慕っていたから、目を潤ませていたよ。

それから、ひとつはっきりさせておきたいのは、御崎さんをこの職場に迎えたのは、僕が御崎さんに自分を投影していたからだ。
愛する誰かが交通事故に遭い、自分にできることを精一杯やろうとしている御崎さんが正直羨ましかった。
当時の僕はそれができなかったから。
だから、出来る限りの援助をしたいと思った。
御崎さんのためというより、過去の僕ができなかったことを御崎さんに託すような、結果として自分のためだ。
善良ぶって、実は自分のためなんて、今更だね。
でも、御崎さんには正直に打ち明けるべきだと思い、筆をとりました。

事実婚であることを告白してくれてありがとう。
僕は本人たちが納得して、その先の未来も幸せだと考えるなら、それでいいと思う。
むしろそういう形の方がうまくいくカップルも多いかもしれない。
僕は御崎さんが幸せでいてほしい。ただそれだけです。

僕も自分の人生を今一度見つめ直そうと思う。
御崎さんと出会えて、本当によかった。
ありがとう。
いつまでもお元気で。

島崎　裕貴】