「お店は本当に智一人でなんとかできるの?」

母の目は心配を通り越して般若のように怒りに震えているように見えた。

「三ヵ月、の辛抱だから」

「三ヵ月の辛抱って……その間無収入で家賃は発生するんでしょう?」

「まぁそうだけど」

母に言われなくたって十分わかってる。

三ヵ月の無収入の恐ろしさと、更に三ヵ月以降もしばらくは経営が苦しくなるだろうってことも。

三ヵ月。

きっと短いようで長い。

「お父さんとお母さんにできることがあればいつでも相談しなさい」

父は前を向いたまま、穏やかにそう言った。

「うん、ありがとう」

今の私にはその言葉だけで十分だ。

これ以上両親に迷惑はかけられないもの。自分達でなんとかするしかない。

その決意をもって家を出て、悠と一緒になって店を構えたんだもの。

きっと悠も同じ気持ちなはず。

とにかく今はあまり先のことは考えず、目の前の仕事を片付けていくことだけ。

両親と軽くうどん屋さんで軽く晩御飯ととった後、アパートまで送ってもらった。

父の車はウィンカーをチカチカ点滅させながら、普段よりもゆっくりと通りの角を曲がっていく。

こんなに心細い気持ちになったのはいつ以来だろう。

両親の反対を押し切って、悠の家に転がり込んだ日ですらそんな気持ちにはならなかったのに。

玄関の扉を開けた先は真っ暗で、今朝の悠との会話や光景がまるで随分昔のことのように感じた。