悠はこんな体なのに店の心配をし、その段取りを私に手配してくれる。

それなのに私ってば、余計なことばかり考えて、悠の代わりに自分で動くことすらできなかった。

私って一体何なんだろう。

情けなくも、何もできない自分が腹立たしい。

「どうした?」

悠が私の顔を覗き込む。

「いや、何でもない。大丈夫。とりあえずすぐに連絡できるところにするね。今日は日曜だから、業者には明日の朝伝える」

「うん、頼む」

「でも、明日手術っていってたけど、何時から?」

「午後二時って医者が言ってた。午前中に家族に手術の説明したいと言ってたけれど、それどころじゃないって断っておいたよ。手術も大したことないから、智は仕事に集中してくれればいいから」

「大したことないって、複雑骨折の手術なんでしょう?……」

咄嗟に母が口を挟んだ。

悠は母の方に視線を向けると、すまさなさそうに笑う。

「申し訳ありません。でも、大丈夫です。手術は先生に任せるしかないですし」

「……ご両親には?」

母は恐る恐る口にした。

ほぼ勘当状態の彼の両親のことは、私ですらほとんど口にしたことはないのに。

流石の悠も一瞬顔をこわばらせたが、すぐに柔らかい表情で答える。

「いえ、今日のことは何も」

「……そう」

母の「そう」には「それでいいのか」っていう思いが込められているような気がしたけれど、敢えて通訳することはやめた。


帰りの車の中。

母はひたすら無言を徹している。

言いたいことがある時ほど、だんまりを通すのは、昔から変わらない。

何度も助手席でため息をついていた母がふいに私の座る後部座席の方に顔を向けた。