蓮の提案でコンビニに寄る。
 コンビニの前で、わたしと蓮は肉まんを頬張った。
 道路に落ちた枯れ葉がかさかさと音を立てて、風に飛ばされていく。

「寒いな」

 蓮がぽつりと呟く。

「まあ、二月だしね」

「それより萌香、お前なんで角煮まんなんだよ」

「え? おいしそうだったからに決まってるでしょ」

「冬と言えば肉まんだろ!」

 蓮が自分の食べかけの肉まんを頭上高く掲げる。
 わたしは角煮まんを飲み込んでからいう。

「そんなの好みじゃん」

「いや、肉まん一択だ。おれはピザまんも角煮まんも認めないぞ! あいつらは肉まん界にいてはならない存在!」

「まるでピザまんと角煮まんに親でも殺されたみたいだね」

「ピザまんと角煮まんに、おれの村は焼かれたんだ……!」

 そういってうそ泣きをした蓮が、ぽろりと自分の持っていた肉まんを地面に落とす。

「あああっ! おれの肉まん!」

「あーあ。うそ泣きなんかするからー」

「うわあああ。だからピザまんと角煮まんは嫌いなんだよ。こんなところでもおれに呪いをかけてきやがる!」

「単なる不注意でしょ、もー」

 わたしはちょっと呆れつつも、自分の角煮まんを半分に割る。
 そして片方を蓮に差し出す。

「はい。一口食べちゃったけど」

「え? あ、ありがとう」

 蓮はそういって私から角煮まんを受け取ると、食べようとしてぴたりと動きを止める。

「どしたの?」

 わたしが聞くと、蓮はようやく聞き取れる声でいった。

「これって、間接キス、だよな」

 蓮はそういい終えた途端、耳まで真っ赤になる。

 わたしも胸がドキドキしてきた。

 そこまで正直で純粋なのに、彼から恋の香りはしてこない。
 わたしは複雑な気持ちで角煮まんにかぶりついた。