対戦結果。
フリースロー5本勝負、5対4で小野寺の勝ち。
ワン・オン・ワン、3本勝負で3対0で小野寺の勝ち。
「ちょっと!おのっち、いつのまにバスケ上手くなったのよ!」
はぁはぁと息を切らしながら京香が小野寺に向かって聞いた。小野寺は涼しい顔で京香見てニヤっとして言った。
「まぁ、俺運動神経いいからな〜。なんでもちょっと練習すりゃ上手くなるんだよなぁ。」
余裕の表情でそう話す小野寺に、負けず嫌いに火がついた京香が言った。
「まぐれよ、まぐれ!!もう1回ワン・オン・ワンするわよ!」
そう言って、また続きをしようとしたところで、京香の後ろから聞き覚えのある声がした。
「君、バスケ上手いね。美都と一緒にいるってことは1年生?」
声の主が分かった京香が真っ赤になって振り向くと、さっきまで反対側のコートでワン・オン・ワンをしていた川上がいつのまにか京香の後ろに立っていた。
「川上先輩…」
真っ赤になった京香を見て、にっこり微笑んだ川上は、次に小野寺へ視線を移した。
「美都を負かすなんて、君、経験者?よかったら男バスに入らない?」
にっこり爽やかな笑顔の川上に、うっとおしそうな表情を向けると小野寺は「いや、どこの部にも所属する気ないんで。」ときっぱり断った。
すると、あぁ、と川上は声を上げて「もしかして君が話題の小野寺君?」と尋ねた。
「話題?」
京香が不思議そうな顔をすると、川上は京香に視線を戻して言った。
「そ。1年生に、どの部にも所属せずに、色んな部の助っ人で参加して、ここ最近では試合の度に活躍して成果を上げてる小野寺って子がいるって話でさ。入部をもちかけたキャプテンはみんな断られたって、話題になってるんだよね。」
そう説明すると、再び川上は視線を小野寺に戻した。
「まぁ、君にその気がないなら今日は引き上げるけど、気が向いたらいつでも来てね。…ちなみに、美都の練習姿も見れるよ?」
意味深な表情で小野寺にそう言うと、川上は一緒にいた3年のメンバーと一緒に歩いて校舎に向かっていった。
川上の後ろ姿を見つめる京香の横に来て、小野寺はガシガシと頭を掻きながら言った。
「いやー、俺、噂になるほどのスポーツ万能オトコなんだなぁ。」
さっきまで川上に向けていた表情とは打って変わって、満更でもない表情をした小野寺がチラッと京香の方へ目線を向けた。
「背たかーい。かぁっこいい。イケメンは話してるだけでキラッキラだわぁ。」
小野寺の言葉はまるで耳に入っていない様子の京香を見て、小野寺はガックリと項垂れた。
「きょーかは、ああいう高身長な運動神経いいやつがタイプなわけ?」
そう小野寺が尋ねると、京香は「うーん」と言って考えてから答えた。
「高身長、運動神経いいっていうのはもちろんだけど、私は頭がいい人がいいなぁ。川上先輩は成績も上位って聞くし、まさにどストライクだね。」
ちなみに小野寺と京香は身長でいうと2、3センチ小野寺がリードしている程度で、ほぼ高さは変わらない。
未だに川上の後ろ姿を見つめてボーっとしている京香を見て、小野寺は京香に聞こえない程の小さな声で「身長か…」とぼそっと呟いた。



