もし、この初恋が叶ったら


急に京香が大きな声をあげ、小野寺の腕の中から抜け出すと、空き地の端にしゃがみこんだ。


「すごい!あったよ!!」


京香の手には、四つ葉のクローバー。


「ちょっと、すごくない!?前は1時間くらいかけてやっと見つけたのに、今日は目を向けて一瞬で見つけたよ!」


嬉しそうにはしゃぐ京香。


対して、小野寺はちょっと呆れたような目線を京香に向けた。


京香のそばに同じ目線の高さまでしゃがみこむと「俺、すごいいいこと言おうとしてたんだけど?」と文句を言った。


「いいこと?なに?」


「ちょ…マジで聞いてなかったんかよ…」


「ごめん!今度はちゃんと聞くー。だから、今言って?」


「や、いい。言いたいこと、忘れた。」


「なんか、同じような言葉を前にも聞いた気が…」


「そうか?まぁ、気にすんな。」


「えー。気になるー。まぁ、いいや。とりあえず…はい。」


そう言うと、京香は小野寺に持っていた四つ葉のクローバーを差し出した。


「『私の、彼氏になってください』」


京香の言葉を聞いた小野寺が、驚いたような表情を見せた。

それを見て、えへへ、と恥ずかしそうに笑う京香。


「…かわいすぎ、京香。」


「え?」


呟いた小野寺の一言が聞こえなくて頭を傾げると、



小野寺の顔が一瞬のうちに京香に近づき、小野寺の柔らかい唇が、京香の唇に触れた。


京香の唇の柔らかさを確かめるように、小野寺の唇が優しく動く。


しばらくしてから、ちゅっ、という音と共に、小野寺の唇は離れた。


「…好きだよ、京香。」


嬉しそうにはにかみながら、小野寺が真っ直ぐ京香を見つめた。


キュッと心臓が締め付けられて少しだけ苦しいのに、気持ちはとても幸せで、満たされている。


「私も、叶のことが、好き。」


手で口元を隠しながらそう言うと、小野寺の顔が真っ赤に染まった。


「俺、今めちゃくちゃ幸せだ。」


そう言いながら満面の笑みを見せてくれた小野寺。



ずっと、ずっと、そばにいて欲しい。


素直に、そう思った。


──これが私の、本当の初恋なんだな。



スタートを切ったばかりの初恋。


少しずつ、育てていこう。



小野寺の優しい笑顔を見つめながら、京香はそう思った。