もし、この初恋が叶ったら


急に黙った京香の元に、小野寺がゆっくり近づく。


保健室の時のように後ずさりしない京香を見て、安心したような表情を見せると、京香の左手に手を伸ばした。


小野寺の手が触れて、一瞬、ドクンと心臓が大きくはねた。


優しい手付きで京香の手を包み込んでくれた小野寺の大きな手。


とても温かい。


離さないでほしいと思った。


京香の手を握ったまま、俯く京香の頭の上から、小野寺が気持ちを伝える。


「京香。俺、もし、この初恋が叶ったら、一生京香しか見なくていいって思ってる。最近、京香のペンケースにキーホルダー付いてないけど、俺があの時渡した四つ葉のクローバーの意味を知った上で、もう1度、あのキーホルダーを身に着けてもいいって思ってくれたら、すげー嬉しい。」


そこまで話すと、京香の左手をキュッと握り直し、深呼吸をしてから、息を整え、言葉を続けた。



「俺のものに…俺の彼女に、なって欲しい。どうかな…?」


見上げると、小野寺は、不安気な表情を浮かべていた。


今度こそ、正直に、自分の気持ちを伝えよう。


「…うれし。」


「え?」


京香が呟いた言葉が聞こえなかったのか、小野寺が聞き返してきたので、京香は顔を上げ、小野寺を見上げながら気持ちを口にした。


「嬉しい、って言ったの。おのっちの…彼女に、なりたいです。」


そう伝えた瞬間、小野寺の顔から不安さが消え、代わりに、真っ赤に染まった。


「…おのっち、顔──」

からかっちゃえ、なんて思った瞬間、握っていた左手をグイと引っ張られ、勢いそのままで、小野寺の胸元に飛び込んだ。


そして、背中まで回された小野寺の腕に、キュッと優しく抱きしめられた。


「まじかよ、すっげー嬉しい。」


その言葉を聞いて嬉しくなり、思わず京香も、小野寺の背中に手を回して、抱きしめ返した。


「私も、すごく嬉しい。」


「よかった。俺、一生京香を幸せに──」


「あー!」