もし、この初恋が叶ったら


待ち合わせ場所の空き地に着くと、小野寺がいた。


小野寺から少し離れたところで小野寺と目線を合わせ、どちらからともなく、少しだけ、はにかみながら笑った。


「シロツメクサってさ、年中葉っぱ生えてるんだな。」


空き地に目を向けたまま、そう話しかけてくれた小野寺に、慌てて言葉を返す。


「そ、そうだね!年中四つ葉のクローバー探しできるね!」


緊張気味な口調で話す京香を見て、フッと柔らかく微笑むと、小野寺は話をし始めた。


「…ここに来ると、四つ葉のクローバーを見つけた、あの時のことを思い出すんだ。」


小野寺が、目線をチラッと京香に向けた後、再び空き地の方へ目線を戻した。


「私もだよ。めっちゃ時間かかったよねー。あんなに苦労して見つけたのに、簡単に私に渡そうとするから、びっくりしちゃったよー。」


「まぁ、最初からプレゼントするつもりで探してたんだけどな。」


「え!?そうなの?」


「うん。」


京香の方に顔を向けた小野寺の横顔が、夕焼けに染まってオレンジ色になっている。



「四つ葉のクローバーの花言葉、知ってる?」



小野寺の意外な問いかけに、京香は「うーん?」と少し考え込んでから答えた。


「分かんない。『勝利』とか?」


「ぶー。はずれー。」


「えー?ちょっと待って、当ててみせるから!」


そう言って、京香がまた考え込んだのを見て、小野寺がクスクスと笑った。


「当たるか?正解言おうか?」


「え!待って待って。もう一回だけ答えたい。」


「相変わらずの負けず嫌いっぷりだな。」


「わかった!『幸運』、じゃない!?」


「お、それも正解。」


「え?他にも意味があるってこと。」


「そ。もう1つの正解は…」


そう言うと、小野寺が体ごと、京香に向き合った。



「もう1つの正解は、『私のものになって』。だよ。」



「私のものに…?」


その意味を考えた瞬間、顔が熱くなるのを感じた。


小野寺も「…なんか、言ってて恥ずかしくなった」と言いながら、京香から目をそらした。


「な、なによー!自分から言っといて!」


「言ったよ!本心だけど、なんか、言ってて恥ずかしくなったんだって。」


「ほ、本心…」


小野寺の言葉に、またドキドキさせられた。