もし、この初恋が叶ったら


机に手をついたままだから、思ったより小野寺の顔が近くにあってドキドキしてきた。


こんなに近くで小野寺の顔を見たのは初めてだ。


真っ直ぐ伸びた眉に、


切れ長の目。


瞳の奥から見つめられていることに気付いた瞬間、ぶわっと顔が赤くなるのを感じ、顔をそらす。


一瞬だけ、小野寺が少し目を見開いたのが見えた。


──やば、顔赤くなったの、バレ…


「…なんで赤くなってんの?」


耳元で小野寺の声が聞こえる。


「だ、だって…顔ちか…!」


「へぇ…もしかして、照れてる?」


「て、照れてなんか、ないっ!」


「ふーん?」


ニヤニヤとした小野寺の顔が浮かぶような口調。


恥ずかしすぎて、小野寺の顔が、見れない。


「…至近距離で目を合わせた時に、嫌がって逃げずに顔が赤くなるのって、可能性あるってことだよな?な、京香?」


「な、なんで私…」


「好きだからだよ。」


──…え?


言われたことが信じられず、思わず小野寺の方に顔を向けた。


小野寺の頬が、少しだけ赤い。


ほんのり、耳も。


恥ずかしそうではあるが、目は真剣だ。


「え…?い、今、なんて…」


「京香のことが、好きだ。」


「お、おのっちの好きな相手が…私?」


「そうだけど?さっきからそう言ってるだろ。」


「え…な、なんで…」


「好きな理由は、さっき言っただろ。可愛くて、いつも一生懸命で、真っ直ぐで、正直なとこが好きだ。」


「なっ…!」


さっき聞いた言葉達が、全部自分に向けられていたものだったなんて。


再び、ボボボッと顔が赤くなるのを感じた。


さっきから、心臓の音が、煩い。


「…そんな反応見せられたら、俺…期待しちゃうんだけど?」


「こ、こんなに近くで目線合わせたら、こうなるでしょ…!」


「嫌?」


「へ!?」


「俺と、目線合わせるの…嫌?」


「い…!嫌、では…ない……けど…」


段々と声が小さくなる京香を、小野寺が覗き込むようにして見つめてくる。


再び、ボボボッと赤くなるのを感じた。