「そう。じゃあ今聞いてよ、相談。」
「え!?…ま、まぁ…いいけど…?」
京香がそう返すと、小野寺が京香の方にゆっくりと近づいてきた。
身長が高くなった小野寺は、京香を見下ろしながら口を開いた。
「その女さぁ、めちゃくちゃ可愛いんだよね。授業中、真剣に離し聞いてる顔も可愛いけど、友達と話してて笑った顔なんか、他の女なんか霞むくらい、可愛い。」
「へ、へぇ…?」
話しながら距離を詰めてくる小野寺と距離を置きながら少しずつ後ずさる。
「愛嬌バツグンだし、何に対しても一生懸命だし、自分に正直で、真っすぐで、マジでタイプ。」
「そ、そうなんだ~?」
小野寺が真っ直ぐ向けてくる視線から逃れていると…
トンッ
保健師の先生のデスクのところまで追い込まれた。
「…てことで──」
バンッ
京香が小野寺の脇をすり抜けようとしたところで、小野寺が勢いよく、デスクに両手をついた。
おかげで、小野寺の腕と腕の間に挟まれる形になってしまい、動けない。
「──どうやったら、その女に男として意識してもらえると思う?」
「ど、どうって…」
「キスの1つでもしたら、男として意識してもらえるの?」
「い、いきなりキスはやめたがいいよ!」
「なんで?」
「な、なんでって…そりゃ…いきなりキスは、ダメでしょ。ふぁ、ファーストキス…かもしれないじゃん。」
「ふーん?ファーストキスかどうかって、そんなに大事なの?」
「そりゃ…女子はみんな、キスに憧れてるんだから、最初にキスする相手って大事だよ。」
そう言うと、小野寺が京香の顔を間近で覗き込んできた。



