エンゲージリングは買ってもらわないことにした。

そんなものをつける機会もないし、どうせすぐ入籍してマリッジリングになるんだから。

銀座の高級宝石店は明るい店内にたくさん宝石が飾られていて、とにかくキラキラと眩しい。

マリッジリングというのはそもそもみんなシンプルなため、その分内側に名前や入籍記念日を刻んでもらったりするらしい。

だけど刻印してもらうには少し時間を要するし、入籍時に指輪が間に合わないと格好もつかない。

結局、店員さんおすすめの新作を購入した。

シンプルな見た目だけど、女性用だけ小さなダイヤが埋め込まれている。

おすすめというのは大抵高いものだ。

こういうお店に勤めていると、相手がお金を持っている人かどうか見極められるんだろうか。

私たちについてくれていたのは店長である中年の女性だった。

千紘は値段も見ずに

「姫に似合いそうだ」

なんて言ってブラックカードで支払いを済ませた。

『姫』と言った時の店長の二度見がおもしろくて口をおさえて笑いをこらえた。

そりゃそうだよね。この歳で姫って。