それから2日後。千紘から連絡が来て、指輪を買いに行くことになった。

会社のそばのパーキングで待ち合わせをし、今日は千紘の運転する車で移動する。

ベンツか…まあいい車なんだろうと予想はしていたけど。

傷つけたら大変だと思うと緊張してリラックスできない。

当然だけど、千紘が運転する姿を見るのは初めてで新鮮だ。

子どもだったはずの千紘が大人になって今隣で運転をしている。

しかも、片手でハンドルを回してしまえるような慣れた手つきで。

運転しているとき男は3割増しでかっこよく見えると聞くけど、まだ大人になったかっこいい千紘のことも見慣れていないから、正直3割増しどころじゃなくて心臓がバクバクする。

「姫、あまり見られると恥ずかしいんだが…
どうかしたのか?」

「えっ」

千紘は前を見て運転しているのに、私の視線に気づかれてしまっていたようだ。

すぐに目をそらしたけど、顔が火照って熱くなる。

「…運転してる千紘が不思議だなって思っただけ。…ちょっとかっこいいなって」

最後は独り言のように小声になってしまったけど、千紘にはちゃんと聞こえたらしい。

照れくさそうにその横顔が笑った。

「姫にそう言ってもらえるなら、こんなに光栄なことはない。
免許をとってよかった」

光栄ってなんだ?

私はどうしてそこまで姫扱いなんだろう。