「早く……ノワールのもとへ……」

僕は、息を切らしながら走る。さっきまで、僕は1人で物の怪と戦っていた。

戦闘は苦手だけど、僕1人でも倒せそうだったからノワールに先にリオンたちのところに行ってもらったんだ。

物の怪は今まで戦ってきたものよりも弱くて、僕だけでも倒すことが出来た。

「嫌な、予感が…………見つけた……」

町を走っていると視界に見慣れた姿が入って、僕はリオンたちに向かって迷わずに走る。

走っていると、ノワールはオズワルドさんに胸ぐらを掴まれているのが見えた。

「……嫌な予感なんて、当たらなくていいのに……!」

そう言って、僕はリオンの近くで立ち止まる。リオンは「メル……」と戸惑った表情で僕を見た。

「何?この状況……」

僕の視界に映るのは、無言で嘲笑うオズワルドさんと静かに泣いているノワールの姿。

「……ノワールに、何をした……!!」

僕が叫ぶと、オズワルドさんはゆっくりと僕の方を見る。

「お前は……確か、藤村零(ふじむられい)と言ったか……」

この世界にないはずの言語……日本語でそう言いながら、オズワルドさんはノワールから手を離した。

ノワールは、力なく地面に座り込む。