俺の放った矢が物の怪に刺さるけど、物の怪は微動だにしない。

俺の家で居候している、詩人のメルキュールと別れた俺らは、物の怪と対峙していた。同じく居候をしているエリカとシャルロットは、物の怪の放った魔法で拘束されて動けないでいた。

「俺の攻撃が、通らない……」

ネクロマンサーのカズが、黒い光を放つ剣を握り直しながら呟く。

「……」

……この時、ノワールならどうする?

俺の義理の弟、ノワールは頭の回転が早い。冷静に敵の弱点を戦いながら分析して、俺らに弱点を教えてくれる。

……ノワールと初めて会った時から、彼は常に冷静でどこか大人びていた。

ノワールの第一印象は、「おかしなやつ」だった。

両親に捨てられて不安なはずなのに、不安そうな顔を一切見せなかった。当時の俺には意味を理解出来ない単語が出てきたし、俺より年下なのに俺よりも勉強が出来ていた。

今思えば、ここで気づくべきだったのかもしれない。ノワールには俺らに話せない秘密がある、と。

「…………」

……いつか、ノワールがその秘密を話してくれる日が来るのかな?

ノワールのことを考えてから、俺はノワールみたいに弱点を分析してみようと試みる。