どのくらい時間が経ったのだろう。
外はうっすらと明るくなり、窓越しの朝日が少しずつ差し込んでいた。

大きなベッドの上にシーツに包まれた私たちがいて、隼人は静かな寝息を立てて眠っている。
私はそっと隼人から離れると、自分の体を起こした。

「それにしてもすごいマンション」

ゲストハウスに使っているって言うだけあって、部屋の中に生活感のようなものはない。
どこかの高級ホテルだと言われれば、納得できるような場所。
ただホテルと違うのは、キッチンがあり日用品がそろっていること。

「桃」
ボーッと窓の外を眺めていた私に隼人の声がかかった。

「ごめん、起こした?」
「いや、起きようと思ったところだった」
「そう」

昨夜の私達は外が白むまで体を重ねていた。
お互いの本望のままに求めあい、息を切らせながら抱き合った。
それでも朝を迎えればいつもの関係に戻り、職場に行けば上司と部下になる。
それが私と隼人の関係なのだ。

「シャワー、使うだろ?」
「うん」
「その間に朝食のルームサービスを頼んでおくよ」
「ありがとう」

言いたいことも聞きたいこともあるのに、顔を見ると結局何も言えない。
気にはなりながらも、秘密の関係である以上は仕方ないのかなと私はあきらめた。