「わかった、今日はもう帰れ」
「言われなくても」
「送って行くよ」
私の言葉を遮り立ち上がった隼人は、車のキーを取り出した。

「いいわよ、一人で帰れるから」

私も鞄を持って玄関に向かったけれど、すでに隼人は靴を履いている。
困ったな、本気で送るつもりだ。
別に送ってもらうことが嫌なわけではないが、二人でいるところを誰かに見られたら面倒だし、何よりも今日の隼人はとても疲れているように見える。

「ねえ、本当にいいよ。もし父さんにでも見られたら面倒だし」

私達の仲が公になれば、困るのは私よりも隼人の方。
そう思うからこそ、私は用心してしまう。

「そんなに見られたくないなら、マスクとサングラスで変装でもして、家から少し離れた場所で降ろしてやるよ」
「だから・・・」

この言い方だと、私が隼人との関係を隠したいと思っているみたいじゃないの。

「ほら、行くぞ」

完全にご機嫌斜めの隼人は一人で玄関を出て行ってしまった。