この恋は期間限定につき、お腹の子と逃げることにします~素直になれない秘書は敏腕上司の愛に捕らわれる~

「ただいま」
「おかえり」

隼人が帰って来たのは午後10時。
玄関から聞こえてくる声からして、かなり疲れているように感じた。

「遅かったのね」
「ああ、川村さんが残業してたから付き合ってきた」
「そう」

いつも定時に帰って行く川村唯が、わざわざ残業なんて何か怪しい。
きっと隼人との接点を持ちたくて企んだことに違いないと、私は思っている。

「食事は?」
「遅くなりそうだったから、ホテルのカフェで軽く済ませた」

遅くなりそうなら今日会おうなんて誘わなければいいのに。
そんな事を思う私は、きっとかわいくない女なのだろうな。

「隼人も疲れているようだから、私は帰ろうか?」

とてもじゃないが、今の隼人にそんな気があるようには見えない。

「何で?桃は帰りたいのか?」
「そうじゃないけれど・・・」

疲れているようだから一人で休みたいかなと思っただけ。
深い意味はない。