今日は実の兄である一条創介の一条コンツェルン総帥就任の日。
同時に私が勤務する一条プリンスホテルの社長にも就任するため、それをお祝いして盛大なパーティーが開かれる予定になっている。
そのために、今は仕事から離れ専業主婦となった望愛さんも駆け付けたのだ。
普段は妊娠中の外出にうるさいお兄ちゃんも、今日ばかりは望愛さんの同行を許したらしい。

「外出って久しぶりじゃないですか?」
「そうなの。いつもは創介さんと一緒にしか出掛けないから、一人でのお出かけは本当に珍しいのよ」
「そうでしょうね」

何しろお兄ちゃんの溺愛っぷりっは凄い。
お昼休みと夕方の帰宅の前には必ず連絡を入れるし、どんなに忙しくても病院の検診にも同行する。
もちろん仕事に手を抜くことは無いけれど、見ているこっちが恥ずかしくなるくらいラブラブなのだ。

「望愛さんは、今の生活が窮屈ではないんですか?」
失礼とは思いながら、気になっていたことを口にしてみる。

普段一条の娘とバレてしまうことを恐れてコソコソと生きている私にとって、わざわざ一条家に嫁入りしてきた望愛さんの気持ちが理解できなくて、いつかチャンスがあれば聞いてみたかった。

「あのね、私が好きになって一生を共にしようと思ったのは一条創介だけれど、創介が一条コンツェルンの跡継ぎだから好きになったわけではないの」
「ええ、わかっています」

巷では財産目当ての玉の輿って報道もあるが、望愛さんがそんな人でないのは私も理解している。
でも・・・