「じいさんはお前に優也を引き合わせたいんだよ」
それまで黙っていたお兄ちゃんが教えてくれた。

え、それって・・・
この時になって母さんの困ったって表情の意味が分かった。
どうやらおじいさまは、私と丸星デパートの御曹司を引き合わせたいようだ。
それにしても、

「お兄ちゃんは相手の人を知っているの?」
さっきの口ぶりから知り合いなのだろうと感じた。
もしかして、お兄ちゃんも一枚噛んでいるのだろうか。

「優也は大学の後輩だ。歳は25だから・・・桃と同じじゃないかな。財界のパーティーでも顔をあわせるから知っているが、いい奴だぞ」
「へー」

お兄ちゃんが言うんだから、いい人なのだろう。
それに、丸星の御曹司なら私の相手に不足はないってことらしい。
でもねえ・・・

「私、職場の人には一条の娘であることを知られたくないんだけれど」
お兄ちゃんに向かって唇を尖らせて見せる。

「そんなこと言ったって、いつまでも隠しておくことはできないんだ。お前はこのまま嘘をつき続けるつもりなのか?」
「それは・・・」

私だってずっとこののでいられないのはわかっている。
それでも、今はまだこのままでいたい。