「次は、双子だそうだな」
会長がニコニコと俺の方を見る。

「ええ、そのようです」

昨年春に娘の咲良が生まれ先日一歳の誕生日を迎えたばかりなのだが、桃のお腹には新たな命が宿っている。
それも双子と聞き、検診に同行していた俺も驚いた。
ただ、高井家にとっても近藤家にとっても家族が増えるのはうれしいことで、どちらの家も大喜び。
桃のために家政婦を雇おうとするじいさんや、よほど孫がかわいいのかことあるごとに桃を呼び出す高井のご両親との攻防戦が日々続いている。

「にぎやかになるのはいいことだな」
「ええ、そうですね」

創介と桃のご両親が亡くなった後寂しい暮らしをしていた会長の言葉に、俺は静かにうなずくことしかできなかった。
子供が増えれば桃の負担は大きくなるし、俺もだんだん忙しくなって時間の融通も利かなくなってきた。
それでも、新しい命の誕生を俺は心から喜んでいる。