お兄ちゃん達が帰った夕方。

「桃、大丈夫か?」
「平気よ」

さすがに疲れてソファー横になった私を隼人が見下ろす。
私だけを見つめるその眼差しは、暖かくてとても優しい。

「ねえ、キスして」
なぜか私は口走った。

「バカ」
ちょっとだけ笑った隼人がそっと私を抱きしめてから、唇を重ねる。

流れ込んでくる熱は心地よく私の中に染み渡る。
私も隼人の背中に手を回した。
もう誰の目をはばかることもなく、自分の心を偽ることもなく、素直に生きることができる。
今まで多くの人に大切にしてもらった分を、授かった我が子と愛してくれる隼人に返していこう。

「これからもよろしくな、奥さん」
色んな意味を込めて発せられたであろう隼人の言葉に、私はうなずいた。

「よろしくね、隼人」
一緒に幸せになりましょう。


fin