「もう一度聞くよ、ここで働く気はある?」

私も先輩たちも黙り込んでしまった数分間の後、谷口主任が再び私に尋ねた。
ここまで言われても、やる気にならないのかと挑んでくるようだった。

「一生懸命働きます」
私ははっきりと答えた。

状況に不満があるにしても、今ここに自分の意志でいるのは事実。
であるならば精一杯努力しよう。そう素直にそう思えた。

「じゃあ、明日からは秘書課に来なさい」
「えっ?」

うんうんと頷きながら発せられた言葉に、私は固まった。
さすがにおじいさまやお兄ちゃんと顔を合わせる部署は・・・

「一生懸命働くんだろ?」
「え、ええ」
困ったぞ、こういう言い方をされれば今更嫌だとは言えない。

放心状態の私を置いたまま、谷口主任はラウンジの課長と話を付けて秘書課への配属を決めてしまった。
後から聞いた話では、谷口主任は肩書こそ主任職だけれど、副社長であるお兄ちゃんの側近らしい。
特に秘書課に関しては人事まで任されているようで、社内で優秀な人材を見つけては秘書課に集めているのだと教えられた。
もちろん私が秘書課に配属になったのは優秀だったからだとは思わないが、何かの思惑があったのには違いないと思う。

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