「桃、俺と結婚してくれるか?」
そう言って差し出されたのは小さな箱。

「えっと、これは・・・」

このサイズ感でおおよその想像はつくのだけれど・・・
それにしても急展開すぎる。

「これは代々近藤家に受け継がれた指輪だそうだ。母から預かって、今日のためにリフォームしていたんだ。だから、桃の指にもピッタリのはずだ」
「あり、がとう」

余りにも手回しがよくてびっくり。
一体隼人はいつから準備していたのだろう。

「ククク、桃が驚いた顔をしている」
「そりゃあそうよ」
私は数日前まで、隼人がお見合い相手だなんて知らなかったんだから。

「今更嫌と言っても逃がす気はないけれど、結婚するよな?」
「はい」

本音を言えば、私も隼人から離れる自信がなかった。
一人で暮らす準備をしながら、心細くて仕方がなかった。
たとえすべてを失ってでも、私は隼人の隣にいたいのだと気づいてしまった。