「そう言えば、お前は来週見合いだろ?」
「ああ、うん」

忘れたわけではないけれど、考えないようにしていた。
だってこのお腹でお見合いなんて、行ける訳がない。

「心配しなくても人生なんとかなるものだ。あまり難しく考えずに行って来い」
「うん」

自分は望愛さんと恋愛結婚したからか、私の結婚についてもあまり口をはさんでこないお兄ちゃんが、珍しくアドバイスをくれる。
私としてはお見合いまでに逃げ出すつもりでいるけれど、いざとなればその場に行くしかないだろう。

「みんな桃を思ってのことだから、気負うことなく自然体でいればいい。いざとなれば助けてやるからな」

今まで一日たりとして共に暮らしたことのない兄妹だけれど、私はお兄ちゃんのことを本心から嫌ったことは無い。
全てをあるがままに受け入れる潔さを尊敬もしているし、その生き方をうらやましいと思っていた。

「ありがとう、お兄ちゃん」
この先子供と2人で生きていこうと誓った私だが、お兄ちゃんの言葉で少しだけ救われた。
長い人生には険しい道が待っているのだろうけれど、信念に従って生きていこうと思えた。