「あいつにはあいつの人生があって、それなりの事情もあるんだよ。だから今はそっとしておいてやれ。あいつだって好きでここを離れるわけじゃないんだ」
「そんな・・・だったら辞めなきゃいいじゃない」

きっと複雑な事情があるのだろうと思いながらも、私は面白くなかった。
そもそも、セフレとはいえ男女関係を続けている私に、何の話もないのが一番気にいらない。
隼人にとって私はそれだけの存在だったのだと突きつけられた気分だ。

「大丈夫か?お前、真っ青な顔しているぞ」
「うん。平気」

ダメだ、ここで倒れる訳にはいかない。
私はこの子を守らないといけないんだから。
そっとお腹に手を当てて、私は唇をかみしめた。

隼人が黙って私のもとを去ろうとしていることを知ってショックではあるけれど、私だって逃げ出そうとしていたわけで人のことを言えた義理ではない。
見方を変えれば、けじめをつけるいいチャンスなのかもしれないな。