私のことを愛し心配してくれた父さんは、寝込んでしまった私をただ黙って見ているだけではなかった。

「来月20日だ。忘れるんじゃないぞ」
「ねえ、それって断れないの?」
「ダメだ」
「そんな・・・」

それは、仕事の過労から倒れてしまった私のために父さんが用意したお見合い。
父さんからすれば、倒れるほど無理をしてまで仕事に行くくらいなら結婚して仕事を辞めて欲しい。そんな思いなのだろう。
もちろん私は嫌だったけれど、寝込んでいる間に日取りまで決まってしまいどうすることもできなかった。
幸いお見合いまでは1ヶ月ほどの時間があるが、この様子じゃ父さんは引き下がってはくれそうにない。困ったなあ。

「今度はちゃんと仲人の方も入った正式なものだ。一条の娘として恥ずかしくないように、きちんと準備をしておきなさい」
「大丈夫ですよ、お父さん。当日は振袖を着せようと準備していますから」
「そうか振袖か、それはいいなあ」

本人である私はそっちのけで盛り上がる両親。
私は面白くないなと思いながら、その様子を見ていた。