「今年のサンマは不漁だって言うのに、こんなに集められるなんてすごいね」

自身もデパートの経営にかかわっている優也さんが、秋用に用意されたメニューを見ながら感心している。

「そうね、この短時間で集めるのはなかなか大変だったと思うわ」

みんなが努力してなんとか用意した秋のメニュー。
幸いお客様にもとても好評で、レストランの利用客も増えているらしい。

「それにしても、サンマもキノコもこの量をこの品質でそろえるのは簡単なことじゃない」

うん、それは私にもわかっている。

「うちも困ったら川村さんに頼んでみようかな」
「それは・・・」

優也さんの言葉を聞いて、私は黙ってしまった。
今回の新メニューの商品調達には川村唯の実家である『川村物産』が一役かっている。
もちろん以前から取引のあった企業ではあるものの、今回無理を聞いて商品を集めてくれたのは川村物産だった。
そこにはおそらく川村唯の力が働いていたのだろうと思う。

「さすがに川村物産の一人娘ってだけのことはある」
「・・・そうね」

川村唯は、何もできずにあたふたするだけの私なんかよりもずっと一条コンツェルンの役に立っている。